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プピリィの禁書目録~その7~

壊れたはずのオルゴールが突然鳴り出して、懐かしい曲が流れてくる。
ユズはふと夢から醒めた。
オルゴールなんてありはしない。
だがユズの手の平には小さなオルゴールがのっている。
そしてまたユズは夢から醒める。
まるでタマネギを剥き続けるようにどこまでも夢へ。
現実に辿り着かない。
そんな、嫌な夢だった。


ユズは夜の静寂が部屋を包む中目を覚まし、あることを思い出した。
そうだ。俺はあの時、相棒と一緒に遺跡に入ったんだ。
それから――
「そうだ……。俺は帰らなくちゃいけないんだ。そして、相棒に会うんだ」
突然記憶が戻ったので少し頭の調子が悪い。
しかし、すべて思い出した。何もかも。
どうしてここに来たのかさえも。
ユズは取り合えずカーラにこのことを話そうとベッドから体を起こし、カーラの部屋に向かう。
扉をコンコンとノックし、返答を待つ。すると「どうしたの? こんな夜中に」とカーラの声が聞こえガチャリと扉が開いた。
「記憶が戻ったんだ。全部」
「え……。そうなの……。どうして、急に? やっぱり叔母様の地図で何か思い出したのかしら……」
「ここで話すのもなんだし、リビングで話そう」
ユズがそう言うと、カーラはまだよく事情を把握していないような、どこか悲しそうな顔をしながら「うん」とだけ呟いた。
見慣れたリビング。でもそこは自分のいるべき場所でないことをユズはもう知っていた。そう思うとどこかこの魔法で照らされた白いリビングがやけに物悲しく見えた。
カーラは座りなれた自分の席に着くなり、ユズの方を見つめているだけで口をぎゅっと紡いでいる。
そんなリビングに漂う静寂を破ったのはユズだった。「昨日見た地図さ、あれ俺の国の地図なんだ。最初あの見慣れている地図の文字をどこで見たのか解らなかったんだけど、寝ている時、ふと思い出した」
「じゃああの地図を見せたのは無駄じゃなかったのね……。良かったわ」
全然良かったと思えないような表情でカーラが言うものだから、ユズは次の言葉に困った。
カーラは本当に優しかった。見ず知らずのこんな男に手当てをしてくれたばかりか、一ヶ月もタダ同然で住まわせてくれた。そんなカーラに突然こんな話をするのは心が痛む。
でも、帰らなくちゃいけないんだ。相棒にすまないと言わなければならないんだ。そう、ユズは思った。
「ごめん。突然、こんな事を言って。こんなに優しくされたのは俺初めてだった。とても感謝してる」
「いえ、私もユズさんの話してくれた冒険談、とても楽しかった。元の国に戻っても私、ユズさんのこと忘れない」
「俺もカーラのこと忘れないよ。もし、またここに戻ってくることができたら、また新しい冒険談持ってくる」
ユズは微笑みながら喋った。そうしないとなぜかもう一生帰る事ができないような気がしたから。
カーラは、泣いていた。微笑みながら泣いていた。
なんで、カーラが泣いているのかユズは知っていた。でも目の前にいる白い綺麗な髪をしているカーラをユズは慰めなかった。
慰めたら心の中にある、あの気持ちに気づいてしまうと思ったから。
「カーラ……」
その一言でカーラの頬が崩れ、思わず声を大きくした。
「私……ユズに帰って欲しくない! もっと一緒に話したいし、一緒にいたい。もう私一人はイヤなの!」
カーラの小さい体に似つかわしくないほどの声がリビングに響いた。
カーラは、ずっと一人でがんばってきたのだ。そのことをユズは痛いほど解っていた。
「ごめん。カーラ。でも俺は相棒に合わないといけないんだ。そして謝らないといけないんだ」
「相棒さんって、恋人?」
泣きはらした素の表情でカーラがそんなことを言うので、ユズは一瞬吹き出しそうになったが、なんとか堪えた。
「違うよ。相棒は、相棒だよ」
そう言ったものの、カーラはまだによくわかっていない表情をしている。
「その……なんていうか、そう! 友達のような存在だよ」
「そうなの……。良かった」
何が良かったのかは聞かないことにした。別れるのが辛くなりそうだったから。
「カーラ、まだ一生会えないって決まったわけじゃないんだ。向こうから来れたってことは、また戻ってこられる可能性だってある。だから泣かないで」
「うん……」
「……取り合えず、朝がきたら東にあった遺跡に行こうと思う。俺はそこから来たんだ」
「わかった……。でも――」
ドンドン! ドンドン!
カーラが喋り終わる前に、突然扉からつんざくような音がした。
「カーラちゃん! 大変だよ! いいから開けておくれ!」
この声は、昨日お世話になったカリホさん?
「カリホおばさま? どうしたのこんな夜中に」
扉を開けつつそうカーラが言っていると、血相を変えたカリホさんが部屋に入ってきた。
「た、大変だよ!」
「カリホおばさま。取り合えずお水を」
カーラが水をコップに入れてカリホに水を飲ませる。ゴクゴクゴクとコップの中の水は一瞬のうちになくなった。
「それで、何が大変なんですか? カリホさん」
「ひ、東の遺跡から大量の兵士がこっちに向かってきているんだよ! すでに遺跡に近い村は襲われちまったって話だ!」
大量の……兵士? まさか――
「兵士……?」
カーラは事態を上手く飲み込めてないようだった。
「たぶん、外の世界からだよ! 恐れていた事がおこっちまった」
カリホさんは顔面を蒼白にしながら言う。
「東の遺跡は外の世界と繋がっているんだ。カーラちゃん、ユズさん本当にすまない。部外者や子供にはこのことを教えてはいけない決まりだったんだ」
「そんな……」
カーラの表情も蒼白に染まった。
ユズが窓を見ると、遥か彼方に大量の影とたいまつの火が動いている。
まるで、影が草原を飲み込むように見えた。

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Comments

続きが

非常にきになってるんですが今後の展開どうなっていくんでしょ?
作者さん、とりあえず若返らせてv-33

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