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プピリィの禁書目録~その6~

「いやあ、これほどの移送装置は初めて見ましたよ」

特徴的な丸いメガネを中指で押さえ不気味に口を歪ませながら、アシュトン博士は言った。
ガレキを足で退けつつククロ少佐は周りを見通す。
「まさに古代の遺産だな。海底遺跡の調査は幾度と無く行われたはずだが、地下にこのような巨大移送装置があるとは」
「一般の冒険者の事故で発覚したらしいじゃないですか。その冒険者は名誉勲章者ですよ。死んでいたとしても、ね」
アシュトン博士はクックと喉で鳴らしたような笑い声をもらす。
「口を慎みたまえ、博士。そもそも本来の目的は遺跡の崩壊部分の調査補修、事故にあったという冒険者の救出にある」
「では、なぜ少佐までこの場所に足を運びになられたので? やはりこの場所に何かがあると思いになられたのでは。――そう、例の禁書目録事件との関連性があるとお思いになられたのでしょう?」
アシュトン博士は移送装置から目を離しククロ少佐を見たが、じっと装置の方を見つめるばかりで返事は無い。
「何かお考えで?」
ククロ少佐はふいにアシュトンの方に顔を向けこう言った。
「このわらべ歌を聞いたことがあるかね? 私は祖国を離れ旅立ちます。仲間と一緒に旅立ちます。見えぬ船で隔絶された国へ行き、私は何かを見つけます」
突然わらべ歌を口ずさんだククロ少佐にアシュトン博士は首をひねったが、あることを思い出し目を見開いた。
「800年ほど前、魔法力の優れたそれぞれの人種の少数民族がこの愚かな地を見捨てオーク帝国より北方の土地へ移住し、その魔法力で栄華を極めたと言う」
「それなら私も知っています。ですがただの伝説で、わらべ歌でしょう? 本当だったとしても、その少数民族たちも嵐の中へ消えていったと言うのが定説ですが」
「そうだ。しかし、もし見えぬ船というのが移送装置だとしたら、嵐に遭わず北方の土地へ無事移住しただろう」
「まさか。あんな大昔に移送装置があるわけが……」
「その、『まさか』を現実にするために今お前はここに居るのだ」



「おい! 先遣隊が遺跡に入ってから丸々二日経ったのに、報告した私に一切連絡が来ないとはどういう了見だい!」
海底遺跡、その封鎖された入り口の前でプピリィが駐屯している兵士達に叫んだ。
突然の来訪者に兵士は面倒そうな目を向けつつプピリィに言う。
「大変申し訳ないが、我々も状況を飲み込めないのだ。遺跡が崩壊したとの知らせがあってここまで来たのだが先遣隊が突然、遺跡に入らず入り口を見張れ誰も通すなと言うものだからここで丸々二日間も立ち往生さ」
そう兵士が困った表情をするのでプピリィはため息をついた。
「じゃあ先遣隊直々に話をするから、呼んでくれないかい」
「それが……先遣隊の大部分は出てこないんだ。一部の隊員が食料の運搬をするために時々出てくるくらいで」
「困ったねえ。連絡手段はないのかい?」
「一応あるのだが、連絡しても待機せよとの命令が来るだけなんだ」
プピリィは頭をかきむしる。
兵士とプピリィがそうして悩んでいると、見かねてか会話を聞いていた他の兵士が言った。
「少し待ってくれれば、昼の時間だろ?、もうすぐ出てくる食料運搬をする兵士に色々聞いてみるよ」
疲れきった表情を見せつつもプピリィはその兵士に「ありがとう」と呟いた。
「いやあ、こんなかわいい冒険者さんの言うことを聞かないなんて言語道断ですよ!」
「あら、いやだわ。とっても美少女で才能もある冒険者だなんて」
「そこまで言ってないです。っと、食料運搬の隊員が来たようですね」
兵士が見た方向を見ると先遣隊の隊員と思われる兵士が、やつれた表情で駐屯所の食糧庫に向かっているのが見えた。
「ちょっと! そこの兵隊さん。この事故を報告した冒険者なんだけどいったい中はどうなっているんだい? それと負傷した冒険者は見つかったのかい? 相棒が馬鹿なことをして下に落っこちてしまったんだよ。一応心配で聞きに着たんだけど」
疲れた表情の兵士は足を止めプピリィに言う。
「それが大変なことになったんだよ。上層部の方々が研究員を連れて事故現場を封鎖するとか何とか突然言い出してさ。こっちも困ってるんだ。行方不明になったと思われる冒険者も見付からない始末だ」
プピリィは動揺したのか「そうなのかい」と短く呟いた後壁に背をつけへたり込んでしまった。
「すまない。我々には事故現場を捜索する権限が無いんだ。私も上層部に行方不明の冒険者の安否のことを掛け合ってみるからそんな顔はしないでくれ」
相棒はどうなったのだろう。まだ見つけられていないってことはまさか――
首を振り、手を握る。大丈夫、アイツは生きている。
だってユズは私の、相棒だから。

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